鍼灸施術について

問診・診察について
脈診、腹診など東洋医学の伝統的知識を使っていますが、現代医学の基礎・臨床などの研究に基づく最先端の医療知識を積極的に用い、個々の患者様に適した鍼灸治療を行っております。

鍼灸院には、血液検査、レントゲン、CT、MTといった生化学的検査や精密な検査手段がありません。その為、予診表への記入に基づき現病歴、既往歴、生活や体の状態(ありのままにお話し下さい)を丁寧に聞き、脈や腹部などを中心に必要に応じて各所をチェックして、総合的に診断を行います。

 代表的な東洋医学的診察
 脈診、腹診などの東洋医学の診察方法から「虚実」「寒熱」「気血水」という概念を、ものさし  として総合的に診断します。

  脈診 :脈の深さ・速さ・緊張状態から身体の状態を判断します。(脈の速さ、強さ、リズム
      は西洋医学にも通じます)
  腹診 :全身状態としての“虚実”と東洋医学的な病態を把握します。
  虚実 :病気に対する抵抗力・反応力が充実している状態を“実”、低下している状態を“虚”と
      判断します。
  寒熱 :体の状態が“寒”なのか、“熱”なのかを判断します。
  気血水:心身の健康な状態を維持するのに欠かせない気血水という三つの要素のバランスを判
      断します。

鍼灸治療について

鍼灸治療の本質は体に負担をかけずに生体が本来もっている「内なる治癒力」「自然治癒力」を上手に引き出すことにあります。副作用がないことは鍼灸治療の大きな特徴であり長所です。
また、「未病を治す」という考え方があり、体を健康に保つための療法でもあります。

治療は、主に「経絡治療」という、気や血を体に巡らす経路である経絡の病的状態を脈の状態(脈診)で診断して必要な経穴(ツボ)に鍼や灸をおこない経絡を調整し、身体のバランスを整える「本治法」と、症状に応じた対症療法的な治療「標治法」を併用した治療方法を基礎としています。

多少乱暴に現代医学的に誤解を恐れずにいえば、経穴、筋、神経走路、トリガーポイント等に鍼や灸といった刺激を与え、自律神経系を調整することです。
「本治法」の場合は自律神経系を調整し体全体をよい方向に導くことを主目的として行い、「標治法」の場合は患部近辺の自律神経への働きかけで、局所における血行改善、筋緊張緩和といった反射反応を誘引することによる比較的即効性のある症状緩和を主目的に行います。

鍼について
鍼は、一般的に太さが0.12mm~0.2mm、長さが約3cm~6cmで、鍼先が非常に細いステンレス製の日本鍼です。完全滅菌済み(エチレンオキサイドガス処理)の使い捨ての鍼を用いております。また必要に応じて高圧蒸気滅菌装置(オートクレーブ)で手術器材同様の滅菌処理を行った鍼を使用しています。

鍼の刺激について
刺入時は、鍼がスムーズに入るように鍼管と呼ばれる管を使い痛みを少なくするよう心掛けております。刺入により鈍い痛みや違和感、重い感覚などが生じる場合もあります。これらの感覚は鍼が経穴に入った時に生じる「響き」であり治療効果の現れでもあります。通常は時間とともに軽減するため心配はありません。
しかし、鋭い痛みや電気の走るような不快な感覚が生じることもあります。これらの痛みは通常は起こさないように施術しますが、鍼先が皮下の痛点や末梢神経に触れたときにおこるものです。治療中に不快な感覚が生じた場合はお申し出ください。

低周波パルスについて
疾患によってはより高い効果を求めるために、必要に応じて刺した鍼に低周波を通電いたします。一般的な効果を以下に挙げます。

 【血行不良の改善】
  鍼を刺すだけでも、血行が良くなります。さらに、鍼に低周波をながすことで筋肉を繰り返し
  収縮・弛緩させます。その筋ポンプ作用で、滞っている体液の循環を改善させ、老廃物の排出
  を促進します。血流が改善されると、痛みを引き起こしている物質も流されるため、頑固な肩
  こりや慢性的な腰痛の改善につながります。

 【鎮痛効果】
  日常生活での姿勢、生活習慣、オーバーユースによる筋肉の重だるい痛みや、神経を締め付け
  てしまって起こる神経痛などは低周波治療が非常に効果的です。求心性神経への持続的な刺激
  により、自律神経反射、ホルモン分泌等を促し鎮痛系を活発化します。

 【筋肉の衰えの予防】
  動かさない筋肉は、使われることがないので徐々に痩せ衰えていきます。特に寝たきり状態や
  神経麻痺等では筋の萎縮は必発です。低周波で運動神経に刺激を送り、筋肉を他動させ萎縮の
  防止をはかります。

 【神経の賦活】
  麻痺や鈍麻等、障害を起こした神経に対し。低周波で刺激を送ることによって、神経を賦活し
  正常な機能への改善を促します。

 【免疫力の向上】
  鍼治療により自律神経を調整することで、免疫力向上につながります。一般的に交感神経が活
  発になると顆粒球が増え、副交感神経が活発になるとリンパ球が増えます。求心性神経への持
  続的な刺激により、自律神経反射、ホルモン分泌等を促し免疫系を活発化します。

 【精神安定効果】
  1HZの低周波は体の自然な周波数と同調し、非常に心地のよい刺激となって心身ともにリラッ
  クスした状態(副交感神経を優位)へと効果的に導きます。

灸について
灸を行うこともありますか。鍼を主体とする治療を行い、必要に応じて灸を併用します。原則として、跡の残らない灸の方法を用いていますが、不安のある方、また火傷し易い方はご相談下さい。

施術後の一時的な症状の増悪(鍼あたり、灸あたり)について
副作用が無い事が鍼灸治療の特徴でもあります。ただし、鍼灸治療が奏効する前に一時的な悪化を認める場合があります、これを好転反応あるいは瞑眩(めんげん)といいます。治療初期には眠くなるという程度の軽いものから、場合によっては症状がかえって重くなるまたはこれまで痛みを感じなかった箇所に一時的に痛みが出たり、極端に体がだるくなることもあります。
いずれも体が快方に向かう際の一時的な反応ですので、自然に治まります。
とくに鍼治療が初めての方は、こういった症状が出やすいです。2度3度と治療の回数を重ねるに従って、治療後の不愉快な印象はなくなっていきます。
個人差はありますが長くても1~2日で収まります。なかなか治まらない場合は、隠れていた症状が出てきたということになります。ご相談下さい。

内出血について
鍼灸は副作用のリスクが無く、自然で身体に優しい施術ですが、皮膚に鍼を刺す以上、内出血のリスクは避けられないことをご了承ください。毛細血管が存在している部位(顔面部等)は特に出血や内出血が起こる可能性が高くなります。害はありませんが跡が消失するまで数日間を要す場合があります。

皮膚の表面に近くにある血管が損傷した場合にはすぐに内出血が確認できますが、深い部分の血管が損傷した場合には、数時間後、または翌日以降に出てくることがあります。また、施術直後にはわずかな範囲だった内出血が、時間が経つにしたがい、広がって来ることもあります。

通常、健康な状態の血管や大きな血管は血管壁の厚さもあり弾力がありますので、鍼がふれてもよけてくれますが、健康状態の悪い血管(例えば糖尿病等出血性の疾患に罹患している方)は血管の弾力性がなく脆くなっていますし、毛細血管等膜状の血管は鍼を避けきることができずに損傷をしてしまいます。

筋肉が凝っていたり、血行が悪く冷えていたり、老廃物が溜まっているところは痛みを感じやすく、出血しやすい傾向にあります。
高齢の方は血管が脆くなっている場合が多いため内出血しやすく、内出血してしまうと治るまで時間がかかる傾向にあります。血液をサラサラにする薬を服用している方も、血液が凝固しにくいため内出血が消えるまで時間がかかるようです。

治療後について
治療とは、体に備わっている自然治癒力を引き出すきっかけを作り、治癒してゆく方向付けをするものです。確かに治療後には、ある程度の症状の変化はあります。時には「すっかり治った」と感じることもあるかも知れません。しかしあくまでも、治療とは治っていくための「きっかけ作り」と「方向付け」であり、本当の回復は治療によって引き出された自然治癒力によって起こります。ですから治療後はなるべく安静にお過ごしいただくことをお願いしております。

生活アドバイスについて
患者様の疾病のなかには、いくつかの日常生活上の問題を解決することによって、鍼灸治療の効果をさらに引き上げることが可能となるものもあります。日常生活の不摂生や過労がいろいろな病気の原因や、症状悪化の引き金になっている場合も多いからです。患者様ご自身が気づいていない、あるいは気づいていても対策が講じられていない生活上の問題点を明確にし、その是正に向けて、適切なアドバイスをいたします。

効果の目安について
症状や発症の時期によって効果が表れる期間には個人差があります。したがって、一律に「このくらい」と明言できるものではありません。
急性の疾患、たとえばぎっくり腰の初期症状なら、治療後に効果が顕れやすいです。逆に慢性の難治性疾患はすぐには変化が顕れないことが多いのも事実です。これは鍼灸に限らず現代医学にも当てはまります。一般的に、

 症状が急性期の場合
 症状が出てまだ間もないものは、病が古くないので、症状が改善されるのも早いです。症状が改
 善されるまでは、毎日または一日おきなどの間隔で治療を受けると効果的です。

 症状が慢性的な場合
 慢性的な疾患や症状は、今の状態になるまでに時間がかかっており、表面的な痛みだけでなく、
 精神的な疲労や内臓の疲労・不調和、血行不良から来ていることもあります。自律神経のバラン
 スを整える、血液循環を善くするなど、身体の内側と外側両面的に時間をかけて治療をしていく
 ことが効果的です。治療開始時は改善への土台作りのような時期ですので、間隔をあまり空けず
 、週2回~週1回にすると効果的です。その後症状が改善されていくのをみて、治療間隔を空け
 ていきます。

 体質改善・体力向上の場合
 治療をはじめたときの体力、体質にもより、週1回から2週に1回くらいのペースで、長い目で見
 ながらの受診をお勧めします。

 予防・養生・健康維持の場合
 特に強い症状はないが身体の調子を保っておきたい、日頃の身体の疲れを取りたいなど、普段の
 健康管理として鍼灸を活用する場合は、月2回~月1回のペースでの受診をお勧めいたします。
 また、調子が悪くなったときには、間隔を短くしていくと効果的です。

小児鍼について
「小児鍼」は、一般的に生後6ヶ月~12歳に適用する治療です。
大人の鍼治療とは異なり、「小児鍼」は体に鍼を刺すことはありません。
圧したり、擦ったりを中心とした刺激を経穴や経絡へ施します。

適応症状
大人と同じ症状および小児特有の症状(疳の虫・夜泣き・夜尿症等)